トップスター・トップ娘役という関係性を考える②――お互いが想い合う尊さ
さて、こんな記事を書いたわけですが、
次は、宝塚のトップコンビ萌えについて頭を整理したいなと思います。
見栄えのバランスはもちろん重要
去年、天海祐希・ゆりちゃんのドラマ「緊急取調室」を見て、共演している田中哲司との見栄えのバランスが素晴らしいなと思ったのが、いま思えば宝塚に再びハマるきっかけでした。
ゆりちゃんと田中哲司の役においての関係は、作中くっついてもおかしくない、そのギリギリを楽しむ異性間ブロマンスですね。
もちろん、宝塚のコンビ萌えとは違いますが、ゆりちゃんと横に並んで釣り合いが取れて、こんなにバランスがよい人をみるのは、麻乃佳世・ヨシコちゃん以来だなあって思ったんですよ。いわゆる"chemistry"というやつです。
ゆりよしはそれぞれ個々として好きなんですけど、コンビとして好きだったかと聞かれたらぶっちゃけ見栄えの問題だけだったかもしれません。ゆりちゃんが好きだったとき、私は小学生だったので男役が光り輝いているのをみるのが愉しみだったんですから、コンビネーションがどうとか、そういう観点で見ていなかったからです。
それを楽しめてたってことはヨシコちゃんが娘役としていい仕事をしてたってことの証明なんですけどね。
で、最近ヨシコちゃんなにしてんのかなと思ったら「麗人」のコンサートで涼風真世・カナメさんと共演したと知ってびっくり。それでDVD買ってみたりして。そこから昭和ジェンヌにどんどん足を突っ込んでいくわけなんですけど、最終的に剣幸・ウタコさんにたどり着くわけです。
ウタコさんはゆりちゃんのミーマイ再演の際に、稽古見学してる様子をTVで見たときから、お名前は存じ上げていました。ほぼ日の連載でゆりちゃんがいかにウタコさんのことを大切に想っているかも知っていたし。
で、去年「緊急取調室」がやっていたころ、ゆりちゃんはまたほぼ日でウタコさんとの想い出を語ってくれています。
で、先に「麗人」みちゃったんですけど、宝塚らしい凛としたところはわかるんですが、お声も柔らかいしあまりにお美しい女性なので、最初は全然男役だったイメージがもてませんでした(汗)。
でも、ここまでゆりちゃんが尊敬する先輩ってどんなトップさんだったのか知りたいなアと気になっていたので思いきって「ル・ポアゾン」をみたんですよね。
いやー見たら最後(笑)。なぜいままで見てこなかったのか!ここで完全にオチました……。
ゆりちゃん時代の月組が大好きだったのに、ゆりちゃんがお手本にしたスターさんを好きにならないはずがなかったのよね……。
ただ、ウタコさんを好きになったのは、ちょっといままでとは違いました。
観た作品がさよなら公演だからなおさらだったと思うんですけど、こだま愛・ミミさんが相手役だったからこそウタコさんを好きになったから。しかもこれは見栄えだけの話じゃ収まらないのです……。
相手に向ける想いが互いの魅力を高める
私が言うまでもないことですが、「ル・ポアゾン」ってホントにお洒落な作品で、トリスタンとイゾルデのピュアな2人にうっとりしたと思えば、現代に生きるジゴロなアダムとイブのエロスに酔わされ、トップガーン!翻弄され続けます。
それだけ振り幅の広い作品で楽しませられるということは、演者にいろんな引き出しがあるってことなんですよね。岡田敬二先生が「トップ2人のために書いた大人っぽい香りのある作品」と当時の公演パンフレットに書いていましたが、岡田先生の意図を知ってか知らずか、ウタコさんは歌劇の座談会で「媚薬にはいろんな香りがあると思うから、それぞれ場面ごとの香りを自分自身も変えられるように、お客様にいろんなものを味わったと感じていただけるようにと…」とおっしゃっています。なんて素敵な表現!
この作品、ミミさんがウタコさんを本当にとろけるような顔で見つめたり、色気たっぷりに挑発したりと本当に目が離せない存在で、ここまで娘役に注目したことはありませんでした。ダンスが一番って言われてるとは思えぬ歌と芝居のうまさはもちろん、年月を経て成熟した娘役の濃厚な寄り添い力に圧倒されます。
そして、ウタコさんが抜群の包容力でミミさんを受け止めることで、さらに男役としての色気が増すのが素晴らしい。トップコンビって相乗効果があるから魅了されるのだとこの時やっとわかりました。
トップコンビってダンスも歌も芝居も一緒のシーンが多いから、それはもう長くて濃密な時間を共にするわけですよね。だから、相当いろんなことあると思うんです笑。きっとウタコさんは言葉を選ぶと思うけど、きっといい作品をつくりあげるために真摯に言葉をかけると思うし。それでもビジネスライクな感じのない、何回見ても新鮮な感じを失くさずに、味わい深い作品をつくれるというのは、信頼関係がちゃんと構築されてるからなんじゃないかと。
望海風斗・だいもんの番組でウタコさんが「アイツ本当にいろんなことしでかしてくれるんだよね(笑)。でも、なにがあっても"私ならなんとかしてくれる"って思いを持ってくれてたことが、彼女の娘役として素敵なところなの」っておっしゃってて、ミミさんにもウタコさんへの特別な思いがあると思いますが、お互いに想い合うってすごく尊いですよね。それが舞台に現れて、多くのファンを魅了してたんだと思うと、生で観れてたら悶絶ものだったろうと思うのです。
年を重ねても変わらぬ関係性の尊さ
さて、ウタミミにハマってから100周年公演DVDや麗人コンサートをあらためて観てみました。
シメさんの変わらなさに脱帽して最初は気づきませんでしたが、トークだけでも見直してみると本当にいろんな気付きがあります。
峰さんとマイマイさんやペイさんとマサエさんなど、現役時代の面白エピソードを楽しく話してくれるコンビはたくさんいらっしゃいますけど、話してる内容によっていろんな顔が見られるっていうのはウタミミならではなのかなって。
ウタコさんは基本的に頼りになるお姉さん的存在なんですけど、女子をからかう小学生男子的になるとこがたまらん(笑)。
もちろんミミさんも、お姉さん頼りなかわいい妹でもあり、男子のイジリをさらっと受け止めるおませさんな女子のようでもあって。
当時の映像って少ないし、現役時代、リアルタイムでは知らないからなんとも言えないけど、歌劇やグラフ読んで「こんな2人だったのかな」って想像してたそのままで今でもトークしてる感じがまたすごいんですよね。はぁ、すごい!失われないんだなアって。
基本的に現役時代のときのことを聞かれて「ウタコさんにおんぶにだっこでした」ってミミさんが言って「本当におんぶにだっこしてましたよ」って返すウタコさんを生で観た今となっては「この夫婦漫才どんだけ続けてきたんだろ……」って思うんですけど、ちょっとねー彼氏彼女っぽいときありませんか(笑)?
ミミさんが自分より華奢なウタコさんにリフトしてもらう振りがついたとき、ご飯を食べなくなっちゃうって話が有名じゃないですか。
相手に負担をかけないようにって、上級生だからって言ってしまえばそれまでなんですけど、なにも言わず食べなくなっちゃうミミさんが愛おしいし、そんなミミさんに「いいから来なさい」ってご飯連れてったり家に呼んだりして食べさせるウタコさんの気遣いがまた愛があってたまらないし。
ミミさん、ウタコさんに会うときは「元カレに会う感じ」とか言ったことあるそうじゃないですかぁ(笑)!
先日の逸翁コンサートでもその話があったんですけど、「私、ミミをリフトして重いって思ったことないよ?」ってウタコさんが言ったときの男前な感じと、それ聞いてホッとして嬉しそうなミミさんが可愛くてたまらなかった。尊いよねぇ……。
さて、これだけの多面性をですね、先日もトークだけで楽しめたんですよね……。
それで、更に磨きの掛かった男役・娘役芸と、年月を重ねて芸の幅を広げた女性としての「いま」を見せてもらって、完全にこっちはキャパオーバー。すさまじい多幸感でした。お2人とも成熟した大人の女性なのに、いろんな顔がある、そのどれもが嘘だって感じさせない。
女性が演じる男役に寄り添う娘役って究極の虚構なんですけど、そこに真実味をもたらすのは人としての信頼関係だと思う。
それをすごく教えてもらったな、と。
最後に、一つ気になるのは当時から「ウタミミ」って呼称はあったんですかね?
これ言い出した人天才だと思うww